選挙が近づくと、東京都知事選挙のように候補者数が過去最多を記録するなど、政治への関心が一気に高まる場面があります。ある年の都知事選では史上最多56人が立候補し、選挙ポスターの掲示板の枠が足りなくなり、候補者自身がクリアファイルにポスターを入れて掲示板の外側に固定するという事態も起きました。こうした選挙戦では、それぞれの候補者が公約や主張を伝えるために様々な手段を使いますが、その一つがポスティングチラシです。
一方で、選挙とは関係のない一般的な企業や店舗のチラシに、うっかり政治的な内容が入り込んでしまうケースもあります。ポスティングチラシに政治的な要素をどう扱うかは、選挙活動を行う候補者・団体の場合と、一般企業が普段の広告で気をつけるべき場合の、大きく二つの視点があります。この記事では、株式会社ポスティングサービスが現場で受けている相談や実際の対応をもとに、両方の注意点を整理します。
選挙(政治活動)におけるポスティングチラシのルール
候補者はそれぞれの主張や公約を有権者に伝えていきますが、この選挙運動は「公職選挙法」によって細かく規制されています。チラシをポスティングする際にも、この公職選挙法の規定に従う必要があります。選挙運動用のチラシと呼ばれるものは、種類・枚数・配布方法までが法律で定められており、一般企業の販促チラシとは扱いがまったく異なると考えてください。
私たちのもとにも、立候補予定者からチラシ配布のご依頼を頂くことが多々あります。ポスティング会社は広告代理業に分類され、ご依頼頂いた方の代理として広告宣伝活動を行う立場になるため、内容や配布方法については慎重に確認しながらお引き受けしています。選挙は地域を絞って幅広い年齢層に届けたいという目的とポスティングの特性が合いやすく、実際にどのような形で効果的に訴求できるかについては選挙・政治活動チラシのポスティング事例でも詳しく紹介しています。
政治活動としてポスティングを依頼される際の注意点
告示日を境に、ポスティングにおける扱いが大きく変わります。この境目を理解しないまま依頼をしてしまうと、配布そのものができなくなったり、後から回収が必要になったりするため、日程の確認は最初の段階でしっかり行っておく必要があります。
告示日前と告示日後で変わること
告示日前までであれば、制約なくチラシのポスティングを行うことが可能です。政策のお披露目や後援会の案内など、いわゆる政治活動の一環としてのチラシ配布に大きな制限はありません。しかし告示日を過ぎ、「立候補予定者」が「候補者」となってからは、選挙管理委員会による許可を得ないとチラシのポスティングができません。許可証(証紙)を貼り付けたチラシのみがポスティングの対象になります。証紙は候補者ごと・選挙区ごとに交付される枚数が決まっており、印刷した枚数がそのまま配布できるわけではない点にも注意が必要です。
私たちが依頼を受ける際は、証紙が貼られているかどうか、貼られている枚数と配布予定枚数が一致しているかどうかを、配布前に必ず確認します。証紙のないチラシを誤って配布してしまうと、依頼者側だけでなく配布を担当した会社にも責任が及びかねないため、この確認作業は省略できない工程です。地域を分けて配布する場合は、配布エリアの範囲や住宅の密集度によって必要枚数が変わってくるため、配布計画の段階で配布に使用する地図をもとに枚数を割り出すこともあります。
市民団体・支援者による意見広告チラシ
ところでごく稀な話ですが、ある候補者の支援者や、その他の市民団体が、それぞれの主張をチラシにして伝えるという手法もあります。社会に対する主張、新型コロナワクチンに対する意見、子宮頸がんワクチンに対する意見、特定の候補者に対する意見など、内容は様々です。
特に科学的根拠のない主張を行ったり、特定の候補者への意見を伝えるチラシの場合、「発信者の情報を記載できないが、それでも大丈夫か」という相談を受けることがあります。私たちの答えは『NO』です。発信者が誰であるかを明らかにしないまま、意見や批判を不特定多数の住宅に配布することはできません。これは公職選挙法上の問題だけでなく、受け取った住民が発信元を確認できないチラシに対して不信感や不安を抱きやすいという、配布実務上の理由もあります。
ポスティングチラシに記載していただきたい情報
意見的な広告のポスティングご依頼をお引き受けする際、記載していただきたい情報は次の通りです。
- 発信元の企業様や団体様の名称
- 連絡先電話番号
- 所在地
これらは必要最低限の情報です。加えてメールアドレスも記載があると、受け取られた方にとって連絡しやすくなります。そして、チラシの中身については、正確な根拠に基づいた情報であることが必要不可欠です。出典が曖昧な統計や、伝聞をそのまま断定的に書いた文章は、後から根拠を問われたときに説明できず、発信元の団体自体の信用を損なう結果になりかねません。
実務としては、発信元情報が抜けているチラシ原稿を受け取った場合、私たちから追記をお願いするところから始まります。原稿の差し戻しが発生すると配布スケジュールにも影響するため、依頼の初期段階で必要情報を揃えておいていただくと、その後の進行がスムーズになります。
「批判」と「誹謗中傷」の境界、依頼する際の注意事項
一般的な商品の販売や集客のためのチラシと異なり、意見広告の場合は特に、その内容の根拠が求められます。ある都知事選の候補者が言われた言葉ですが、「批判」には根拠が必要です。根拠のない「批判」は「誹謗中傷」になってしまいます。この線引きは文章の書き方一つで印象が大きく変わるため、原稿を作る段階から意識しておく必要があります。
ポスティング会社は広告代理業として、ご依頼頂いた方の代理で広告宣伝活動を行う立場にあるため、私たちもこの点については慎重に確認しています。具体的には、対象を特定できる形で人格を否定する表現になっていないか、事実と意見が区別されて書かれているか、といった観点で原稿を読ませていただいています。チラシ作成の際に何を書いてよいか、どう書けばよいか、これは書いてよいのかダメなのか、といったご質問はいつでもお寄せください。
一般企業のチラシに政治的な内容を入れるべきでない理由
ここまでは選挙運動や意見広告としてポスティングを依頼される場合の話ですが、選挙とは無関係な一般企業や店舗のチラシにも、注意しておきたい点があります。政治は、人によって意見が大きく分かれるデリケートな話題です。ポスティングチラシに政治的な内容を含めてしまうと、地域住民の間で意見対立を引き起こしたり、トラブルに発展したりする可能性があります。
そもそもポスティングは、選挙活動や政策アピールにおいて地域を限定した幅広い年齢層への宣伝に非常に向いている媒体です。だからこそ政治家や政党にとってはポスティングが有効な手段になります。しかし、その一方で、一般的な企業がチラシに政治色を含ませることは決して得策ではありません。政治の話題は、特定の思想や地域性においては有効に働くこともありますが、強く反発する感情を持つ方が多いからです。特に選挙期間中は政治的な話題への反応が敏感になっているため、一般企業のポスティングチラシでは政治的な内容を避けるようにしましょう。この点は業種を問わず共通する注意点ですが、地域住民との距離が近い飲食店のポスティングのように、日々の来店に直結する業種ほど、無関係な話題で反感を買うリスクは避けておきたいところです。
チラシに政治的な内容を含めてしまうと、特定の思想を持つ人々だけに訴求することになり、他の地域住民から反感を買ってしまう可能性があります。ポスティングチラシは、幅広い層に受け入れられるような内容にすることが重要です。さらに、ポスティングチラシは企業や団体の顔とも言えるものです。政治的な内容を含めてしまうと、企業や団体そのもののイメージを損なってしまう可能性があります。政治的な話題は、企業や団体の本来の活動とは関係のないものです。チラシには、企業や団体の活動内容や理念などを分かりやすく伝えるようにしましょう。
政治的な用語や表現を使わない
チラシを作成する際には、意図せず政治的な印象を与える言葉が紛れ込んでいないか、確認する習慣を持つことが大切です。具体的には、以下のような言葉は避けるべきです。
- 特定の政党や政治家に関する名前
- 政治的なスローガンやキャッチフレーズ
- 政治的な対立を煽るような表現
キャッチコピーや見出しに勢いのある言葉を使いたい場面ほど、政治的なフレーズに似た響きの言葉を無自覚に使ってしまいがちです。原稿を書き終えた後、一度読み手の立場に立って見出しだけを読み直してみると、こうした表現に気づきやすくなります。
政治的な話題そのものに触れない
用語だけでなく、話題そのものが政治的な文脈に読めてしまう場合も注意が必要です。具体的には、以下のような内容は避けるべきです。
- 政治制度や政策に関する議論
- 政治家や政治団体への批判
- 政治に関する個人的な意見
政治に関心を持ち、特定の政党や候補者を推したい気持ちは、社会を良くするためにとても重要なことです。ただし、あくまで企業のチラシという枠の中では、中立性を保ち、トラブルを避け、企業や団体のイメージを損なわないように注意することが求められます。政治的な内容は避け、地域住民に役立つ情報を提供したり、商品やサービスをアピールしたりするような内容にするようにしましょう。
チラシの内容に迷ったときの相談の進め方
実際の相談では、明らかに政治的な内容ではなくても、「これは大丈夫だろうか」と判断に迷う原稿が少なくありません。迷った場合は、配布前の原稿確認の段階で相談していただくのが、トラブルを避ける一番確実な方法です。印刷や配布の手配が進んでからの修正は、スケジュールにも費用にも影響が出やすいため、原稿の初稿ができた時点で一度目を通してもらうことをおすすめします。
相談の際は、チラシの原稿とあわせて、配布予定のエリアや配布時期、想定している部数を伝えていただくと、内容面だけでなく配布方法の面でもあわせて確認ができます。用紙の厚みや書体の選び方といった見た目の印象も、チラシ全体の受け取られ方に影響するため、内容の確認とあわせて相談いただくケースが多くあります。また、配布後に受け取り手が不要と感じて放置してしまうとゴミ問題につながることもあるため、内容と配布方法の両面から丁寧に確認することが、結果的に地域とのトラブルを防ぐことにもつながります。
まとめ
ポスティングチラシと政治の関わりには、大きく二つの側面があります。一つは、候補者や支援者、市民団体が選挙運動や意見広告としてポスティングを行う場合で、公職選挙法の規定や、発信元の明示、根拠のある内容であることが求められます。もう一つは、選挙とは無関係な一般企業のチラシに、政治的な内容が意図せず入り込んでしまう場合で、地域住民との無用なトラブルや企業イメージの低下を避けるために、政治的な用語や話題そのものを避けることが望まれます。
どちらのケースでも、ポスティング会社は広告代理業として、依頼者の代理で広告宣伝活動を行う立場にあるため、内容の確認を慎重に行っています。チラシに何を書いてよいか迷った際は、配布前の段階でご相談いただくことをおすすめします。ポスティングのご相談・お見積り
